養育費未払いの逃げ得は許さない!法改正で請求の強制力アップ!

シングルマザー 子供

お子さんのためにも養育費の確保は絶対にしたいところですが、離婚後に養育費を支払われなくなって困っている方や、これから離婚で本当に支払ってもらえるのか、しっかり回収できるのか心配な方は少なくないと思います。

実際、養育費の未払いは社会問題にまで発展しています。

厚生労働省の平成28年の調査によると、養育費の取り決めをせずに離婚した夫婦ばかりでなく、取り決めをしていても支払いが続かないケースもあり、およそ8割ものひとり親家庭が養育費を支払われていないそうです。

このように養育費を踏み倒したり、口座を隠したりして逃げ得となってしまっているのが現状です。

しかし和2年4月1日から養育費の差し押さえなどを定めている法律(民事執行法)が改正されます。相手に前科がつくようになったりなどと養育費を支払わせる強制力を増しました。

今回の記事では、養育費の差し押さえに関する4月からの改正のポイントを抑えて、実際に未払いが起こったときの回収方法を解説します。

養育費未払いはなぜ起きる?これまでの制度の問題点とは

養育費未払い 民事執行法 課題

これまでも養育費の未払いがあった場合、家庭裁判所へ申し立てをすれば財産の差し押さえは可能でした。

財産の差し押さえを行うには、勤務先や預金口座の情報を特定する必要があるのですが、これまでの制度では以下の2つの点が問題視されていました。

  1. 相手が口座や勤務先を変えて財産の特定が難しい
  2. 裁判所が財産開示を命令しても相手が協力しなければ財産が分からない

つまり、現実的には「差し押さえの方法はあるけど、相手に逃げられてしまう可能性もある」という状況だったのです。

弁護士や探偵を雇えば、相手が隠している財産を特定することは不可能ではありませんが、そのためには少なくない依頼費用がかかってしまいます。

養育費の未払いがあるけど泣く泣く諦めるしかないという人達がいたということが現状の制度の一番の問題点です。

そこで、現行制度を見直し、財産の差し押さえの実効力を上げようとしたのが今回の養育費の差し押さえに関する民事執行法の改正のポイントです。

実際に何が変わるのか見ていきましょう。

2020年4月より民事執行法が改正!改正前後で何が変わった?

疑問 民事執行法

今回の民事執行法の改正により、財産の差し押さえの申立て制度自体が利用しやすくなり、また財産の差し押さえまでの実効力を増しました。

養育費の支払いに関わる変更点は、次の2点です。

  • 申立てできる人が増え、養育費支払いの強制力がアップ
  • 未払いの方の現金・給与など財産を隠すことができなくなった

以下から詳しく解説していきます。

①申立てできる人が増え、養育費支払いの強制力がアップ

調停や裁判をしなくても申立てができるように!

以前までは調停離婚や裁判離婚をした方しか財産差し押さえの申立てができませんでした。

「裁判までにはいかないけど…」「そこまでしないと養育費支払ってもらえないのかな?」と調停調書などが無いからと申立てを諦めていた方に朗報です。

今回の養育費に関する法改正で調停や裁判をしなくても申立てができるようになりました。

つまり、相手方の財産を差し押さえて回収するためには、判決や調停調書などの申立てできる証明(=「債務名義」)が必要だったのですが、今回の民事執行法の改正で、この申立てができる証明の幅が広がりました。

債務名義 ~令和2年3月 令和2年4月~
判決
和解調書
調停調書
執行証書 ×

調停離婚や裁判離婚を経て得る判決や調停調書に加えて、今回の民事執行法の改正で裁判所を間に挟まない公証役場でも作れる「執行証書」でも申立てができるようになりました。

裁判所を介してではない、執行証書でも申立てできることは調停や判決までいかない人たちにとってかなり大きな前進といえます。

全ての公正証書が執行証書というわけではなく、執行証書とは公正証書の一つで以下の条件を満たしたものとなります。

①一定額の金銭の支払いをする契約をした公正証書

②契約した金銭の支払いを怠ったときには直ちに強制執行されることを相手方が承諾している

裁判所に協力しない人には前科がつく!

また、せっかく制度を利用できる幅が広がっても、本人が裁判所に姿を現さずに逃げられたままであっては意味がないですよね。

そこで、裁判所の呼び出しに出頭しなかったり、そこで財産に関する嘘をついたときに対する罰則を強化しました。

今までは行政罰といって違反金程度のものだったのですが、刑事罰になり、前科がつくようになりました。罰則は以下のいずれかになります。

  1. 6か月以下の懲役
  2. 50 万円以下の罰金

 

前科がつくとなると、とても強制力がありますよね。自主的に養育費を支払う方も増えるのではないでしょうか。

 ②現金・給与など財産を隠すことができなくなった

①の財産開示手続に加えて、「情報取得手続」という財産を明らかにする方法が新たに加わりました。

「養育費支払いの強制力は確かにあがったけれど、それでも未払いのままだったら?」といった場合などにこの制度が使えます。

本人からしか財産の情報を明らかにできなかったところ、第三者からも財産の情報をもらえるようになりました。

つまり、本人の口座を隠されたり、転職で給料が分からなくても第三者から情報を得ることができます。

ここでいう第三者とは銀行などの金融機関だったり、勤務先が分かる市町村年金機構などです。

養育費 強制執行 情報取得

法務省HP参考)

情報取得手続を利用する時は、まず、なんの財産を差し押さえ対象にするかを決めることになります。

  1. 預貯金を知りたい→銀行
  2. 不動産を知りたい→登記所
  3. 給料(勤務先)を知りたい→市町村年金機構

知りたい財産の対象を決めて、申立てをしたら、裁判所が各々の機関に聞いてくれ、回答を得られるようになりました。

以上の二つの改正により、養育費の支払いの強制力が増しました。

次からは具体的に養育費の未払いが起きた際の請求手順を解説します。

養育費を回収したい!請求の手順は?

ポイント 気付き 発見

実際に養育費の未払いを取り戻したい!という方に簡単に請求の手順を4段階で解説します。

①まずは養育費支払いに関する取り決め状況を確認

もし、元配偶者が養育費の支払いを渋ったり、未払いが起きた場合は、まず離婚時の養育費に関する取り決め状況を確認しましょう。

申立てをするには強制執行に値するかどうかの証明が必要になります。

証明には、「判決」「和解調書」「調停調書」「執行証書」のいずれかの債務名義が必要です。

それぞれの債務名義を手に入れる流れは以下の図の通りです。

養育費 未払い 民事執行法改正

法務省HP参考)

図のように、裁判所や公証役場で養育費に関する取り決めをしたケースが当てはまります。

離婚調停、裁判または公正役場で養育費の取り決めをした方は、この証明書を持って養育費請求の申し立てを行うことができます。

 ②証明書がない場合、家庭裁判所へ養育費請求の申し立て

「債務名義が無い…」「離婚時に養育費に関しては口約束しかしていない…」という方は家庭裁判所で調停し、調停調書を手に入れてから、申立てをしてください。

 ③財産開示請求の手続きを実施

債務名義によって申立ての実施が決定したら、裁判所は養育費未払いの元夫・元妻を呼び出します。呼び出された人は、必ず出頭しなくてはなりません。

呼び出された人は、ここで出頭しなかったり、出頭しても自分の財産に関することで嘘をついたら前科がつくことになります。

 ④相手が財産を言わなければ、情報請求手続きを実施

前科者になってもいい、ということで出頭しなかったり、相手が財産について明らかにしなければ、新たに「情報取得手続」を行い、裁判所経由で財産情報を調べてもらいます。

相手の不動産と勤務先を知りたい場合には、財産開示の申し立てをしてからでないと情報取得手続きができませんが、預貯金口座の場合は財産開示の申し立てをせずに情報取得が可能です。

申し立てをしたけど、相手に財産がなかったら元も子もありませんよね。

そのため、相手に財産があるか不安な方は、まず預貯金の情報取得手続きを行い、その後に財産開示の申し立てを行う方法もあります。

相手の財産のありかが分かったら、「相手の持っているこの財産をこのように差し押さえたい」といった申立書を裁判所に提出し、差し押さえができます。

 これから離婚する人は執行証書を作成しておくと安心

財産の差し押さえの申立てには債務名義が必須なので、これから離婚を考えている方は養育費の取り決めをする際に執行証書を作っておくといざという時も安心です。

相手が養育費を払うと約束したとはいえ、最後まで払い続けられなかった場合も想定すると、後で慌てて調停調書を作るよりもあらかじめ作成しておいた方が時間短縮ができます。

執行証書は裁判を挟まなくても、公証役場で作成することができます。なお、執行証書は公正証書の一部です。公正証書の作成方法は以下の記事で確認してください。

 弁護士に依頼する場合は法テラスが活用できる!

裁判所 法テラス 申立て

もし開示請求をする上で弁護士のサポートをしてもらいたい方がいたら、法テラスの活用がおすすめです。

法テラスとは市民のための法律相談所で無料で弁護士を紹介してくれたり、弁護士費用を一時的に立て替えてくれたりする機能があります。

以下が今回利用できる法テラスの援助です。

  • 弁護士の無料相談
  • 手続における弁護士費用の立替え(代理援助)
  • 必要書類作成における弁護士費用の立替(書類作成援助)

 

法テラスを活用できれば、もっと利用しやすくなりますね。

具体的な利用手順はこちらを参照してください。

法テラスの活用で、今までの弁護士費用よりはお金はかからないかもしれませんが、財産の差し押さえにかかる裁判所費用はかかってしまいます。

具体的には、差し押さえの手数料などや、収入印紙に関する代金(原則4千円)、そして郵便代金が必要で、これらは申立てする側の負担になります。

養育費が支払われるまでこれら経費の立替えをしてくれる自治体も存在しますが、まだまだ少なく、ひとり親家庭の親御さんの負担があるのが現状です。

全てのお子さんの養育費が行き渡る社会になるためにもこういった自治体が増えて、より利用しやすくなることを願うばかりです。