離婚前に養育費について取り決めを行ったにも関わらず、結局養育費がきちんと支払われていない…というようなことはありませんか?
養育費は子供をしっかりと育てていく上で大切なものであり、支払いが滞っている場合は、きちんと対策をとって相手に支払ってもらう必要があります。
今回はその具体的な手段について段階を追って説明します。
養育費の受け取りは子供の権利!養育費はきちんと支払ってもらおう

養育費の受け取りは子供の権利です。
子供の健やかな成長のために重要なものですから、きちんと受け取っておきたいものです。
支払いが滞っている場合、どのような対策をとればいいのでしょうか。
この場合は、養育費の取り決めをした証拠がある場合とない場合で、取れる行動が変わってきます。
順に見ていきましょう。
養育費支払いの取り決めの証拠がない場合に取れる行動は?

まずはじめに、養育費の支払いに関する取り決めの証拠がない場合について説明していきます。
ここでいう「取り決めの証拠」とは、養育費の支払いが滞った場合にすぐに強制執行を行える「債務名義」のことをさしています。具体的には公正証書や調停調書、審判書などのことです。
離婚に際して、養育費やその他金銭に関する条項をこれらの書類に書面化していない場合、つまり口約束でしか取り決めていない場合は、二人で決めた約束の根拠を裁判所に提示する事ができません。
そのため、まずは裁判所に頼ることなく、自力で解決する方法についてご紹介します。
まずは連絡を取ってみる
まずは相手に連絡を取ってみましょう。
直接話せそうなら直接でもいいですし、LINEやFacebookといったSNSを使ったり、手紙や電話でも構いません。
この時のポイントは「◯◯日まで」と期限を区切って伝えることです。
提示した期限までに相手から何もなければ、もう少し強めに相手に交渉していく必要があります。
内容証明郵便を使って催促する
次に紹介する方法は法的効果はありませんが、単に連絡を取るよりも相手に対して強めに出ることができる方法です。
比較的手軽にできるのに相手に強く主張することのできる方法として、内容証明郵便を送る、というものがあります。
内容証明郵便とは、誰が誰にどのような内容の郵便を送ったか、といった郵便の内容を郵便局が証明してくれる郵便のことをさします。
この郵便を送ることで、養育費の支払い要求をしたという証拠ができ、のちに裁判を起こした場合に養育費を請求した証拠になります。
そして何より、内容証明郵便は書留で配達され、手紙の文末にはこれが内容証明郵便として差し出されたものであることを証明する記載が入るので、受け取る側としてはかなりの心理的インパクトがあります。
特に、弁護士に依頼して弁護士名義で内容証明郵便を送ると、これで行動を起こさなければ次には何か法的措置をとるぞ、といった大きなプレッシャーを相手に与える事になります。
それでも支払われない場合は?
①養育費の支払いを求めてもう一度話し合い、公正証書にする
養育費の支払いを催促しても何の音沙汰もない場合は、向こうに何か理由があるのかもしれません。
一度取り決めた養育費をきちんと支払えない事情が生じていたり、取り決めた養育費に納得していない可能性があります。
もう一度話し合い、合意した内容を公正証書にしておくことで再び支払われなくなった場合に強制執行を行う事ができます。
②家庭裁判所に養育費請求の調停を申し立てる
相手との話し合いがうまく進まない場合は、調停を申し立てて、間に調停委員を交える事で話し合いがスムーズに進む可能性があります。
この場合も合意内容を調停調書や審判書に書面化してもらえるため、いざという時の債務名義になる、という意味で安心です。
養育費支払いの取り決めの証拠がある場合

ここからの手続きには取り決めに関する法的証拠が必要になってきます。
順にみていきましょう。
調停で養育費を決めた場合:裁判所に履行勧告をしてもらう
この方法は、「養育費を家庭裁判所を通した調停で決めた場合」のみ使える仕組みです。
公正証書を作成している場合でも、その決定は裁判所を通したものではないためこの方法は使えないので注意してください。
履行勧告とは、簡単にいうと「家庭裁判所で決めたことを守ってもらうよう促す」制度です。これを行うには調停証書か審判書が必要になります。
家庭裁判所の調停や審判で養育費を決めた場合、その決定内容が守られていない時に、調停を行った家庭裁判所に申し出をすることで、その裁判所から養育費の支払い義務者に養育費を支払うよう催促してもらう事ができます。
履行勧告を行うには、家庭裁判所に直接出向いてお願いするか電話で申し出るだけで大丈夫です。また、費用もかかりません。
ただしあくまでも「勧告」に過ぎず、実際に相手が従わなかったとしても支払いを強制することはできません。
履行勧告をしても向こうから何もない場合:履行命令をしてもらう
履行勧告よりも効力のある方法で、履行勧告と同様に家庭裁判所に申し立てることによって利用できるのが履行命令という方法です。
履行命令も、履行勧告と同様に、養育費を支払わない義務者に対して養育費を支払うよう催促してくれる制度です。
しかし履行勧告と異なる点は、正当な理由なしに命令に違反すると10万円以下の罰金が課せられる点です。
履行勧告に比べると相手にプレッシャーがかけられるという反面、履行勧告と同様に支払いに強制力がないことに注意が必要です。
最終手段として:財産の差し押さえを行う
これらのどの手法でも向こうから何も行動がなければ、財産の差し押さえ(強制執行)を行う事が考えられます。
強制執行を行う事で、相手に強制的に養育費を支払わせることになります。
強制執行に必要な書類は、執行力のある債務名義です。具体的には以下のようなものをさします。
- 調停調書
- 審判書
- 公正証書(強制執行の認諾条項付)
強制執行の対象となる財産は不動産や債券などがありますが、養育費の強制執行を検討している方には給与の差し押さえが有効です。
養育費を確実に受け取るには?時効があるって本当?

何らかの手段によって相手から再び養育費が受け取れるようになったとしても、再び支払いが滞る可能性は常にあります。
また、養育費の受け取りには時効があり、一定期間を過ぎると請求できなくなってしまいます。
大切な養育費をきちんと受け取るために必要なことをここでもう一度確認してみたいと思います。
債務名義をとっておこう
一度取り決めた養育費を確実に支払ってもらうために大切なのは、「債務名義」をとっておくことです。これがあることで、万が一支払いが滞った場合に強制執行を行う事ができます。実際に強制執行を行うかどうかは別にして、相手に対して心理的負担を与える事ができるため、養育費をきちんと支払ってもらえる可能性が高まります。
なお、債務名義になるものは以下のようなものです
- 協議離婚なら「公正証書」
- 調停離婚なら「調停調書」
- 審判離婚なら「審判書」
養育費の受け取りには時効がある事に注意しよう
離婚前に取り決めた養育費について、きちんと支払われていない分を過去に遡って請求することはできますが、その養育費の受け取りには時効があります。
時効は養育費をどのように決定したかによって異なります。裁判所を通さずに夫婦間で取り決めた養育費の場合は、消滅時効の期間は5年となります。調停や審判など、裁判所で決定した場合は10年となります。
養育費は通常毎月支払われるものですが、きちんと受け取っていない場合は本来受け取るべき日付から5年、あるいは10年を経過すると時効となって受け取る事ができなくなるのです。
養育費の支払いが止まったら、早めに請求する事が大切です。
後回しにしていると時効がきてしまい、本来受け取るべき養育費がどんどん回収できなくなってしまいます。
養育費は早めに回収しよう!交渉は慎重に!

養育費が支払われなくなっても、忙しい毎日の中ですといつか支払ってくれるだろう、と安易に考えて放置してしまいがちです。
書類があれば、強制的に回収することはできますが、最も恐ろしいのは時効をすぎて回収できなくなってしまうことです。養育費の請求は早めに行って、確実に受け取る事が大切です。
支払われていない養育費を請求をすることは、こちらもかなりの精神的なストレスを要するものですが、相手側にも何らかの理由がある可能性がありますので、話し合いは慎重に進めていく必要があります。
大変な作業ではありますが、子供のためにも養育費はきちんと受け取るようにしておきたいですね。