国際結婚を経て子連れ離婚。子どもの親権や国籍はどうなる?

父 娘 離婚

国際結婚の後に離婚を決断。

お子さんがいる場合は、国によって子どもに関する法律も異なるため、特に注意が必要です。国際離婚ならではの国籍や苗字についても考えなくてはいけません。

または離婚して、「親権はわたしだから」とお子さんを連れて日本へ帰国すると、誘拐罪として罪に問われる可能性も。

国際離婚時にトラブルにならないためにも、事前に双方の国の法律を確認することが大切です。今回は、国際離婚時の子どもについての親権や養育費などの取り決めるうえでの注意点を紹介します。

国際離婚時の親権はどうなる?実際にあった事例と注意点

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国を越えてつながった家族が、いろんな事情を経て離婚という決断をしたとき、子供の親権はどうなるのでしょうか?

国際離婚時に実際にあった事例と、親権の注意点について紹介していきます。

DV夫から子どもを連れ戻すつもりが誘拐犯に?

アメリカ人男性と結婚しアメリカで暮らしていたAさんは、夫の暴力に耐えられなくなり子どもを連れて日本に帰国。その後、離婚が成立しました。

単独親権制の日本で離婚手続きをしたAさんは子どもの親権は自分だけにあると信じていました。

ところが元夫のたび重なる面会の要求に負けて、夏休みに子どもをアメリカに行かせたところ、元夫は子どもを日本に帰国させることを拒否。

アメリカに渡って子どもを返してほしいと訴えるAさんに突きつけられたのは、離婚後も双方に親権がある共同親権制のアメリカで元夫は自分だけを親権者と指定しており、無理に子どもを日本に連れて帰ればAさんは誘拐犯になってしまうという事実でした。

「子どもをアメリカに送ったのが間違いだった」。Aさんはひとり日本に帰国するしかありませんでした。(2010年1月10・11日付け「東京新聞」)

子連れ離婚は双方の国の法制度を確認して公正証書を作成しよう!

離婚後の親権には、単独親権と共同親権の2種類があります。子どもと親の一方の国籍が同じであればそこの法律、また国籍が違えば子どもが住んでいる国の法律が適用されます。

たとえば日本法であれば、子どもの親権は夫婦の協議によることになり、合意ができなければ、調停や裁判に委ねることになります。

日本では結婚している夫婦は子どもの親権を共同で持っていますが、離婚すると、どちらか一方が親権を持つことになります。これが単独親権です。

一方、海外では母親と父親の両方が親権を持つ共同親権な国も多くあります。共同親権では、両親で決めた育児プランに従って、養育を分担します。

子どもの時間を完全に半分ずつに分ける場合もありますが、不均等に分ける場合も。平日は母親、週末は父親といった育児分担だったり、また、子どもが元の家に住んで、父親と母親が入れ替わる方法が取られる場合があるなど、各家庭によっていろんな選択があります。

気を付けてほしいのが、離婚後の子育てについてよく双方で話し合わないと、紹介した事例のようなトラブルを引き起こしてしまうかもしれません。また、子育てについての取り決めが話し合えたら公正証書など法的拘束力のある文書を残しておきましょう。

子どもの国籍の決め方は国によって大きく3つに分けられる

子ども 改姓 離婚

離婚したからといって子どもの国籍は変わりません。

しかし、子どもの国籍について考えないと二重国籍になり、本来取りたいはずの国籍を失ってしまう可能性があります。国籍の選択には年齢制限を設けている国もあるのでよく確認しましょう。

国際結婚した場合、子どもの国籍の決まり方は国によって異なります。国籍の決め手となるのは大きく分けて3つあるので、次からおおまかに説明します。

①父母両系血統主義

生まれたときの父母どちらかの国籍が、そのまま子どもの国籍になることです。

日本は父母両系血統主義を採用しており、出生時に父親、または母親のどちらかが日本人であれば、その子どもは日本国籍を取得することができます。

他にも、韓国や中国、フィリピンも父母両系血統主義を採用しています。

②父系優先血統主義

血統主義の中でも特に父親の国籍を優先する考え方を父系優先血統主義といいます。

父系優先血統主義では、出生時の父親の国籍が子どもの国籍になります。インドネシア、ネパールが父系優先血統主義を採用しています。

③出生地主義

生まれた国がそのまま子どもの国籍となるのが出生地主義です。

出生地主義の場合は、血統主義のように子どもの国籍に父母の国籍が影響しません。アメリカやブラジルが出生地主義にあたります。

二重国籍には気を付けよう

以上紹介したように、子どもの国籍の考え方は3通りあります。国によって国籍を取得できる制度が異なるため、国際結婚の場合は子どもが二重国籍となることがあります。

たとえば、父母のどちらかが日本人で出生地がアメリカだった場合は、その子どもは日本とアメリカの2つの国籍を取得できることになります。

また日本では二重国籍は一定の期限までにどちらかの国籍に決めないと、日本の国籍を失うことになります。期限は以下の通りです。

  • 20歳に達する以前に重国籍となった場合 → 22歳に達するまで
  • 20歳に達した後に重国籍となった場合 → 重国籍となった時から2年以内
日本 韓国 アメリカ 中国 フィリピン インドネシア ブラジル
国籍取得 父母両系血統主義 父母両系血統主義 出生地主義 父母両系血統主義 父母両系血統主義 父系優先血統主義 出生地主義
二重国籍 ×

22歳までに選択

×

22歳までに選択

× ×

18歳までに選択

国籍の選択の方法は以下の通りです。

  • 外国国籍を選択する場合
方法 提出物 提出先
日本国籍の離脱 国籍離脱届 法務局・地方法務局・外国にある日本の大使館・領事館
外国国籍の選択 国籍喪失届 日本の市区町村役場・外国にある日本の大使館・領事館

外国法令による外国国籍の選択をする方法については、当該外国の政府または日本に駐在する外国の大使館・領事館に相談してください。

  • 日本国籍を選択する場合
方法 提出物 提出先
外国国籍の離脱 外国国籍喪失届 日本の市区町村役場・外国にある日本の大使館・領事館
日本国籍の選択宣言 国籍選択届 日本の市区町村役場・外国にある日本の大使館・領事館

国籍の選択宣言で、国籍を喪失する法制ではない外国国籍を持つ方は、選択宣言後、外国国籍の離脱に努めなければいけません。外国法令による外国国籍の離脱をする方法については、当該外国の政府または日本に駐在する外国の大使館・領事館に相談してください。

離婚後の養育費は?国際離婚にも面会交流がある

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離婚後、子どもの親権や監護権についての取り決めに加えて、子どもの養育費や面会交流についても話し合わなければいけません。

養育費の金額や、面会交流では会う頻度、国が離れて遠距離の場合は交通費についてや、面会交流時の日数など取り決めなくてはいけない項目はたくさんあります。

離婚時の話し合いで取り決めたことはトラブルを防ぐためにも口約束にとどめずに、きちんと公正証書を作りましょう。

養育費

養育費とは子どもを育てていくために必要な費用のことです。こちらはどこの国にも共通としてあります。

親権者でなくても、親であれば養育費を支払う義務があり、予想される費用、お互いの財産、収入などから算出して負担金を決めることが多いようです。

しかし長期にわたって必要となるため、収入の減少や再婚などで両親のそれぞれの生活状況が変わり、うやむやになってしまうことも少なくありません。協議離婚であっても養育費の額、支払い方法などは、公正証書にしておくとよいでしょう。

面会交流

国際離婚でも面会交流、つまり面接交渉権があります。面接交渉権とは、子どもを引き取らなった親が、離婚後に子どもと面会する権利のことです。

面接交渉権は法律で定められているものではなく、親双方の同意によって成立するものです。離婚の話し合いの時点で過去の判例などをもとに決めることもあれば、家庭裁判所の調停や審判、離婚裁判の判決として認められることもあります。

離婚により子どもと離れて暮らしても、子どもに面会する権利は親として当然もつものと一般的に考えられており、子どもを養育している親が一方的に面接を拒否することはできません。

また子どもの立場からも、子どもが分かれた親に会える権利を保護する必要があります。

しかし、子どもに悪影響を与えるとき、子どもが嫌がるときなどは児童福祉の観点から面接を制限するべきで、そのような判決も出ています。

面接交渉権は別居中でも認められています。子どもとの面接交渉権はあとでトラブルになりやすいので、こちらも取り決めた事項は必ず公正証書に残しておくといいでしょう。

子どもの苗字は夫婦同姓か夫婦別姓かによって決まる

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離婚後、子供の苗字はどうなるのでしょうか?

両親が夫婦同姓か、夫婦別姓かのどちらを選択したかによって子どもの苗字は決まります。

また、苗字を変更したいときは、日本姓から外国姓にしろ、またはその逆にしろ、家庭裁判所で「氏の変更許可の申立て」を行うことになります。家庭裁判所で氏の変更の許可がおりたら、お住まいの市区町村役場に氏の変更の届け出を提出します。

また、名前が変わった場合はクレジットカードや学校などに親子ともに氏名の変更手続きをすることも忘れないようにしましょう。

①夫婦同姓の場合(日本人が外国姓を名乗っていた場合)

親権に関わらず、離婚してもそのまま子どもは日本人親の戸籍に入り、親と同じく外国姓を名乗ります。

離婚後に親と子どもの苗字を日本姓に変更したい場合は、親が家庭裁判所で「氏の変更許可の申立て」で許可を得た後に「氏変更の届出」をお住まいの市区町村役場に提出します。その時、子どもの戸籍を親に入籍させる「同籍する旨の入籍届」も合わせて提出します。

つまり、親が日本姓に変更する届けを出した時に、戸籍も新しく作り替えられ、そこの子どもの戸籍を入籍させるという考え方です。そうすれば子どもは自動的に親の日本姓を名乗ることになります。

②夫婦別姓の場合

夫婦別姓で、出生時に子どもが日本人親の苗字をとった場合、そのまま子どもは日本姓を名乗ります。

離婚後に子どもの苗字を外国姓に変更したい場合は、家庭裁判所に「子の氏変更許可申立」をすることになります。

反対に、出生時に子どもが外国人親の苗字をとった場合は、そのまま子供は外国姓を名乗ります。

子どもの苗字を外国姓から日本姓に変更する場合は、子どもの戸籍を日本人親に入籍させる「同籍する旨の入籍届」をお住まいの市区町村役場に提出します。

子どもを連れて帰国する際は要注意!

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離婚時、もしくは離婚を考えて別居をする際に、元々いた国から子どもを連れて帰国や国をまたぐ引っ越しをするときは注意してください。必要な手続きなどをよく確認しないと、期せずして誘拐罪に問われてしまうかもしれません。

国をまたぐ子どもの連れ去りを防ぐためにハーグ条約という国際条約があります。

ハーグ条約には、①子を元の居住国へ返還すること ②親子の面会交流の機会を確保 という仕組みで、子どもを連れ去りなどから生じる悪影響から守る目的で作られました。

具体的には、16歳未満の子どもを対象に、一方の親が子を居住国から勝手に連れ去った場合、連れ去られた側の親が申し立てると、連れ去った親のいる国の責任で子を探し出し、裁判手続きなどを経て居住国へ戻すことになります。

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ハーグ条約に適用される条件は以下の3つです。

  • 子の年齢が16才未満
  • 条約締約国間の移動
  • もう一方の親(監護権〇)の同意が無い

ハーグ条約に適用された場合、子どもを連れた国の移動は連れ去りとみなされ、原則子どもは「常居処置国」、つまりもともと暮らしていた国へ返還されます。

もし、自分の子どもが相手方の国へ連れ去られた場合は、以下2つの方法があります。

  1. 日本の外務省ハーグ条約室に返還援助申請
  2. 外国の政府機関に直接申請

また、反対に相手方から返還援助申請があり、相手方と子どもの暮らす国について揉めた場合は、「裁判外紛争解決手続(ADR)」をとることになります。

いずれの手段をとるにしろ注意してほしいのが返還援助申請や裁判を起こしたからといって必ず子どもを自国への返還が叶うわけではありません。常居処置国にある裁判所で、経済状況や暮らした年数など総合的に見られて判断されます。

子どもの返還請求には親子ともに心理的負担が少なくありません。子どもを連れて帰国する前に、大使館やハーグ条約室に相談やよく調べることが大切です。

国際離婚時は、領事館・大使館へ相談を

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いかがでしたか?子どもがいる場合は親権、養育費、面接交渉権などの問題が出てきますが、最近問題になっているのが子どもの奪い合いです。

以上のようなトラブルに巻き込まれないようにするためには、まずはパートナーとの話し合いを大事にすることがありますが、同時に相手国の法律を調べたり、在日、在外大使館、領事館などで情報を集めて確認しましょう。